top of page

💌メイプル ピアだより

​​~過去のコラムをご紹介します~

🌺 3月のコラム 「呼吸」

みなさんは、呼吸って意識したことがありますか。

たとえば、コロナ禍でマスクを長時間していると、頭痛やめまいがしてくることはありませんか。

これはどうも「マスク頭痛」というものだそうです。マスクの中の二酸化炭素ばかりを吸い込んでしまうことが原因のようです。マスクをはずして深呼吸をしているうちに改善してくるので、肺に酸素を十分に取り入れることがいかに大切なものなのかがわかります。

私は抗がん剤治療の最中、夏の暑い日に外に出ると、まるで水槽の中の金魚が水面に浮かんで口をパクパクとさせているような、まさに自分がその状況になったような錯覚に陥ったことがあります。一言で言うと、酸素がうまく吸えずに苦しい状況。どうしてそのようなことになったのかよくわからなかったのですが、後になって、副作用で心臓の機能が低下していたことがわかったので、その影響で、血液が十分に送られずに肺の機能も低下してしまっていたのかもしれないと思いました。

その症状は夏を過ぎると治ったので、猛暑ということも関係していたかもしれません。

また、放射線治療では、気が付いたら放射線肺臓炎を発症していて、病院に駆け込んだ時には重症化する一歩手前でした。でも、パルスオキシメーターの酸素値が今一つ下がらず酸素吸入器を貸してもらえなかったので、個人的に手に入れるにはどうしたらよいのかと看護師さんに真剣に相談したくらいでした。

普通に息が吸えることって、ただそれだけでとてもありがたいことなんだとどちらもその時はつくづくと感じたのですが、、、それも一時のこと、そのありがたさを忘れて生活してしまっている私です。

月1回お世話になっているヨガでは、このところ呼吸法に重点が置かれています。先生は、以前にもお伝えしたこの病院の同じがんの先輩です。

がんに嫌われる体質になりましょう、と体内に酸素を取り入れる呼吸法を紹介してくださっています。

先生曰く、吐くことで身体の力が緩むし、吸うことは意識しなくても自然にできることなので、吐くことだけを意識していくように、と。

よく緊張してしまうタイプの私は、身体が常に凝り固まっています。これまでも、いろいろな場面で「息してる?」と周囲に言われてきたため、どうも緊張したり、根をつめたりした時に息を止める癖がついてしまっているようなのです。なんとかひとつでも呼吸法をマスターして普段から無意識レベルでできるようになりたいなあ、と思いながら毎回臨んでいます。

春の訪れがあちらこちらで見られます。もうすでに、水仙や梅の香りなどからひと足早く春を感じた方もいらっしゃることでしょう。これからの季節は香を楽しめる季節でもありますね。

花の香に触れる時に、普段は忘れてしまっている身体の機能のひとつ「呼吸」を思い出してみませんか。

                                (3月1日)

🐤 2月のコラム 「治療の進歩」

1月1日に、水戸の偕楽園で開花した梅の花の写メを送ってくれた友人がいました。

「え、もう梅の花?」とびっくりしたところ、とくに早く咲く八重咲きの花だったようです。

今月は、いよいよ本格的な梅の季節到来ですね。

年を重ねるごとに、梅の魅力のとりことなってきているので、春を先取りしてくれる梅の花の開花が楽しみです。

最近、乳がん治療についての講義に参加する機会がありました。

亀田総合病院乳腺科の角田ゆう子先生のお話でした。

はじめに、先生の病院での乳腺疾患の診断の進め方についての詳しい説明がありました。なるほど、そういう風に細かく枝分かれしていきながら診断が進んでいくんだ、と納得でき、大変わかりやすかったです。これまで乳がん、と診断されるまでのいきさつについてはとくに疑問はありませんでしたが、今一度診察の時に主治医に伺って確認してみたいと思いました。

治療の話では、非浸潤性の小葉がんの場合、ほとんどが手術の対象外となり経過観察となったことが最近変わったことだということを知りました。

また、ラジオ波を使った治療法の話が出たので、昨年、同じ病院に通う友人が主治医から提案されたという話を思い出しました。あらためて国立がん研究センター中央病院のホームページで確認し、そこで、今現在は「患者申出療養制度…※」の対象となっている治療法だということを知りました。

他にも、BRCA1/2遺伝子検査の保険適用基準、がん遺伝子パネル検査のこと、昨年末に保険適用となったオンコタイプDX乳がん再発スコアプログラムのお話があり、知ってはいましたが、わかりやすい説明でより詳しく理解することができました。

乳がん治療については、このところ毎年のように新しい治療薬が承認されたり、薬の適用のされ方が拡大されたりしてきています。手術の方法も再建の手術を含めて変わってきているようです。自分の治療が始まった6年前と比べて、ますます、より効果が期待できる薬、より負担の少ない治療を選ぶことができる可能性が広がった時代となってきているのだなあ、と感じていました。今回も、そのことをあらためて感じた1時間でした。

恥ずかしながら、私自身は乳がんがわかった当初、もうすでになってしまったのだから今から病気のことを勉強しても仕方がないという思い込みで、1年以上本やネットで調べることを避けていました。当時、芸能人のブログなどで乳がんのことが話題となっていたため、余計知りたくない、という気持ちになってしまっていたように思います。同じ病室で知り合った方のお誘いで、講演会だけは一度足を運びましたが、、。今思うと、現実を受け入れられていなかったのだと思います。

でも、昨今の乳がん治療の進歩を知れば知るほど、今ではうかうかしてはいられないなあ、という意識に変わってきました。

乳がん患者はよく勉強している、と言われることがありますが、これだけ進歩してきている乳がん治療、新しい情報にアンテナを張りつつ、お互いに情報交換しながらよい選択をしていきたいですね。

                                  (2月1日)

  • 未承認薬などをいちはやく使いたい。対象外になっているけれど治験を受けたい。などの要望に応えるためにつくられた制度。

🎍1月のコラム「食の話」

おだやかな新年を迎えました。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 

今回は、食の話です。

 

私はがんになったとわかってからかなり食事にこだわってきました。大豆食品を積極的に食べることは再発リスクを下げる可能性があると聞いていますが、その他の食品に関してはいまだ乳がんとの関係は明らかではないようです。でも、そもそも食事との関連に関する研究が少ないのでは、と考え、私はまずは自分の身体を作ってくれる食事から改善していこうと思いました。

 

それまでの早食い、食べ過ぎを反省したことから始まり、畑で育てるようになった野菜を取り入れ、朝は野菜ジュース、夜は干し野菜からとっただしで作った和食をベースにしました。調味料や国産の有機野菜にできるだけこだわり、味付けは控えめにし、赤身肉をやめ、酵素玄米ご飯に青魚、そして、牛乳をやめて豆乳へ、、、。家族が買ってきた「〇〇先生おすすめのがんが消える食事」「がんに効く食事療法」といった本をバイブルとし、私以上に徹底していた友人からの情報を頼りにしながら邁進していきました。

 

考え方がめったに合わない夫と、なぜか食に関しては一致団結したので、それも後押ししてくれたように思います。

 

お寺で行われた薬膳料理の会に参加した時には、季節の食材を生かした味付けや、医食同源の考え方に学ぶことがたくさんでした。今でも、興味深い分野のひとつです。

 

そんなことを続けているうちに、だんだんと味覚が変化してきたのを感じました。大地の養分を吸収して育った野菜から生まれる優しい味わい、自然の甘さが、心にも身体にも何ともいえない心地よさをもたらしてくれました。これまで〇十年間食べ続け、作りあげてきた身体のデトックスができたようにも感じました。

 

ただ、一方で、食べたいものを自由に食べることができない、やりたいことに時間がさけないといった不自由感は徐々にストレスとなっていきました。ある意味、生活が食に支配されていくようでした。体重とともに体力も落ちてきたように感じていました。体重と骨密度は関係しているので、ホルモン治療中の身としてはあまり減らしたくなかったですし、体力は仕事をする上でもつけたいところでした。実際に、仕事を再開し、時間的にも食にこだわっていく余裕がなくなってきました。

 

そして、6年たった今は、、、旬の恵みを美味しく、バランスよくいただくこと、納豆、味噌などの大豆発酵食品やアブラナ科の野菜を積極的に食べること、乳製品を控えめにすること、これが今の私のこだわりです。アブラナ科の野菜は、かつて私達の病院の乳腺外科にいらして、今は静岡がんセンターの緩和医療科で参与となられておられる安達勇先生に食事の相談にのっていただいた際に、発癌抑制効果の高い野菜としてすすめていただきました。

 

「〇〇はだめ」「〇〇でなければ」という発想から「できれば〇〇がいい」「〇〇が心地よい」

という発想に変え、気持ちもだいぶ楽になりました。今では、身体の声に耳を傾けていくことこそ、心と身体にとって一番よいことなのでは、と思うようになりました。そのためにも、適度な量は心がけたいところです。食べ過ぎは感覚が麻痺してしまい、身体本来の声が聞こえにくくなってしまうように思うので。

 

いざという時には、友人が教えてくれた「断食」がある!とひそかに思っています。

 

食についてはあくまでも私自身の考えですので、みなさんお一人お一人がご自分の身体の声に耳を傾けていかれることをお勧めします。

                                  (1月2日)

🧣12月のコラム「おしゃべりサロン それぞれの良さ」

 

先月末は、はじめて直接お会いしてのおしゃべりサロンを開くことができました。

天気の良い休日の昼下がり、築地の、とあるカフェで。

店主さんこだわりのコーヒーと焼き菓子が美味しいお店です。

 

初参加の方はもちろんですが、zoom越しにお会いしていた方同士でも、つい「はじめまして!」の言葉が口から出て、思わず笑ってしまいました。

 

真剣な、悩み深い話から、病院1階の変わりよう、入院あるあるに至るまで様々な話題が出て、「ええっ。」という驚きや共感の声、そして笑い声が絶えないひと時でした。やっぱり直接会って話せるのっていいなあ、と感じた2時間半でした。

 

今回も、コロナ禍で一人で抱え込んできたストレスをようやく吐き出すことができました、という声が聞かれました。乳がんは近年新薬が次々と承認されてきていることもあり、治療の選択肢が増え、それは私たち患者にとって大変ありがたいことではありますが、反面、何を選択するのかで悩むことも増え、また新たなストレスを生んでいるところもあるのだなあとつくづく感じました。

 

ところで、こうした交流はこれまで半年あまり、オンラインでも行ってきました。Zoomを使って画面越しではありますが、顔の表情や身振りを通して、言葉を通して気持ちが通じ合ったり、元気をもらい合ったり、勇気づけられたり、、。がんになってからより感じるようになった言葉の力は侮れないし、どなたかがおっしゃっておられた「エネルギーの交換」のようなものを感じたこともありました。このコロナ禍においては多少咳をしていても参加可能、遠方に出かけなくてもよい、などのオンラインならではのメリットも大きいです。ご家庭の事情で外に出かけることが難しい時に、zoomだからこそ参加できた、という方もいらっしゃいます。

 

ただ、例えば隣の人の笑いが伝染してついつい笑ってしまうといったような場の雰囲気で生まれるもの、空気を伝わってひびきあうものは、やはり同じ場を共有した者同士でこそ生まれるのだなあ、とあらためて感じました。エネルギーがより直接伝わるようにも思えました。

 

お店が店主の方の趣味で植物いっぱい、パワースポットのような癒しの場であったことも一役買ってくれたように思いました。まさか築地にこんな隠れ家的なカフェがあったとは、という声が出るくらい、意外な場所でしたので。 うれしく、ありがたいひと時でした。

話題の中のひとつに、食事のことが出ました。

今回のコラムで食事のことについても触れようと思いましたが、長くなってしまいそうなので、この話は年明け、次回に載せたいと思います。

 

 

新しい変異株への警戒がはじまっています。1月のおしゃべりサロンも、できれば同じ場所でお会いできるといいなあと思っています。でも、もし何か状況が変わった時は、お茶を飲みながら、自宅でゆっくりと参加するのもありかな、くらいに心に余裕をもっておこうと思います。

 

行き帰りにかかる数時間は、自分の好きなことを楽しむゆとりの時間と前向きにとらえて!

 

体調に気をつけられて、どうぞよい年末年始をお過ごしください。

                               

                                 (12月1日)

🍂11月のコラム「筋肉の話」

 

 

天気のよい秋晴れの日は、外に出ると気持ちがいいですね。

 

暑すぎず寒すぎず、穏やかな日差しを浴びながらウォーキングをしていると、気持ちがすがすがしくなるので、この頃はできるだけ歩くようにしています。以前は自転車で行っていた買い物を、リュックを背負っててくてくと歩くようにしていると、心なしか体力もついてきたような気がします。帰りのリュックの重みが身体にちょうどいい感じに負荷をかけてくれる時と、買いすぎて少々オーバー気味の時とはありますが、、。

 

コロナ禍で身体を動かさないでいると、いろいろな支障がでてきます、と言われている昨今です。私の場合は、肩こり、腰痛、疲れやすさ、足腰の弱りがやってきます。

 

退院後もそうでした。一時、腰痛があまりにもひどくなり、眠れないほどになったため、いろいろな策を講じましたが、最終的には使わなくて弱ってしまった筋肉をつけることが大事だというところに行きつきました。そのころから、家でできる範囲で軽い筋トレやストレッチをしたり、DVDを見ながらヨガをやったり(ヨガもしっかりとやると心地よい筋肉痛になることを発見しました)、ウォーキングをしたり、、、その中でも、今ではウォーキングが一番のお気に入りです。

 

散歩よりもほんの少し早いテンポで歩きながら、あ、この樹はもう色づいてきたんだな、とか、紫陽花の花がドライフラワーになっていい味を出しているな、とか、、、季節によってかすかに漂う匂いもちがってきます。目と耳と鼻と肌で感じるのがとても心地よいのです。

 

腰痛改善によいのではと思い、地元のノルディックウォーキングのサークルに入ってウォーキングの極意を教わったことも、今となってはよかったと思っています。足裏全体で地面をつかむように、膝裏をのばして、などの歩き方にとどまらず、季節を楽しむ心のゆとりも教わった気がします。

 

そして、ひとまわり、ふたまわり年上のお姉さまがたの体幹バランスの見事さ。体幹を保つのに一役買っているのは筋肉です。刺激となりました。

 

みなさんは、何か身体を動かすことはしていますか。

 

運動することがいくつかのがんの予防に効果あり、という話を時々聞きます。でも、もうがんになってしまったのだし、、、と、一時の私はそんな気持ちでした。

そんな中、腰痛から必然的に運動せざるを得なくなったこともさることながら、筋肉を鍛えることはがん患者の延命に効果がある、ということをあらためて知りました。運動が乳がんの予後を改善するというエビデンスも出ています。

 

心を入れ替えました。

 

運動を通して身体の筋肉の中でも大きな割合を占める下肢を鍛えることは、とくに効率的なようです。

 

いろいろなことを知れば知るほど、今では、身体を動かすことは、これから先の人生を楽しむために、そしてQOL(生活の質)を高めるために、自分自身で今できることの大切な要素のひとつになりました。

 

体力が少なくなっている時でも、体力に応じてできることはたくさんあります。座ったままでの足踏みや、つま先の上げ下げ、、、。とにかく、身体に刺激を入れること、骨に刺激を与えること、筋肉を動かすことをこつこつと、です。人間の身体は動くようにできているから、動くことでいろいろな機能が活性化し、免疫機能が上がる効果もあるようです。

 

筋肉貯金、とまではいかなくても、自分の身体を支えてくれている筋肉に毎日挨拶をする、くらいは心がけたいものです。

                                (11月1日)

🍐10月のコラム「不思議」

我が家の小さな畑に行った帰り道、お店に寄ったら、なし、ぶどう、りんご、柿、みかん…たくさんの果物が目に飛び込んできました。

 

地球の気候変動にさらされても、実を結び、秋を届けてくれる。農家さん、流通業者さん、お店の方々、はたまた土の中の微生物に至るまでさまざまな力が加わって、今、ここに存在してくれている。果物好きの私にとっては、思わずありがたい!と言いたくなる光景です。

 

それにしても、以前の私はこのようなことを感じたかなあ。不思議です。

この不思議が先日、なるほど、と思えたことがありました。今年になって、玉置妙憂さんの講演会に参加した時にお聞きした話を思い出したのです。玉置妙憂さんは看護師であり、看護教員であり、ケアマネジャー、僧侶でもある方。講演会やシンポジウムなどで活躍されています。

 

がんに罹患するなどして「自分の命に限りがある」と思えた時、家族や大切な近しい人の命の限りを見た時、そして、災害の時(今、まさにコロナ禍という災害の渦中と言えますね)、、、人は「人間ってなんてはかないのだろう」という思いを抱きます。これは「スピリチュアル」というWHOが健康の条件の4つめに掲げているものの扉を開くことなのです。このようなお話でした。

一昨年まで国立がん研中央病院の精神腫瘍科科長でいらした(現がん研有明病院の腫瘍精神科部長)清水研先生も、がん体験後に起こりうることのひとつに『精神性的変容』を挙げておられます。これは、「自然への感性が鋭敏になる」「超越的な力を感じ取りやすくなる」などということだそうです。

 

自分の感じた「不思議」はこうしたところからも来ているように思えました。

皆さんは、このような経験はありませんか。

                                          

先ほどの清水先生は、がん体験後の心の道筋を「物語る」ことの意味についてもおっしゃっておられます。人に話をすること、自分史を語ることは意味があること、と。語ることで大いに癒されることがあることがいくつかの研究からわかっているそうです。(メイプル ピアが、そのような場のひとつになれますように。)

 

畑のナスやピーマン、ししとうがらしは今でもがんばって実をつけています。長雨を乗り越え、台風を乗り越え、、、おそらく例年のように、霜が降りる頃までは元気に花を咲かせ、実を結ぶはずです。すごい生命力!このパワーがみなさまにも届きますように。

                         (10月2日)

🍆9月のコラム「不安について思うこと」

そういえば、最近セミの声を聴かなくなりました。暦の上では8月23日の処暑を過ぎると暑さが少しやわらぐ頃とされていますし、秋がもう近くまで来ているのでは、と感じることがありますが、外に出るとまだまだ暑い日々ですね。

そんな中、小田原で稲を育てている学生時代の友人から、順調に育っているよう、というメッセージとともに稲穂がついた一面グリーンの田んぼの画像が送られてきました。コロナでおろおろしているのは人間だけで、自然界の生き物や植物はこうしてたくましく生きているのだなあ、と思わずにはいられません。我が家の畑では、ナスがようやく息を吹き返して次々と実を結んできています。自然界の営みに学ぶことたくさんです。

 

ところで、先週のニュースで、10代へのコロナワクチン接種が進んでいる自治体が紹介されていました。少しずつワクチンへの不安をもつ人が少なくなってきている、としつつも、まだ「不安」をもっている人の中には正しい情報を知らないという人も多いそうです。コロナ禍のように先が見えないことからくる不安というものもあると思いますが、正しい情報を手にすることでなくなる「不安」というものも確実にある、それは私自身その不安の渦の中でもがいてきた一人ですので、自信をもって言えます。

告知を受けた直後にセカンドオピニオンを受けることを申し出たこと(セカンドオピニオンを受けに来るような病院であるのにも拘わらず)、更に検査結果を聞いてから治療を始めるまでに、真剣に転院を考えて探し回ったこと、これらは今思えば、正しい情報を知らなかったがゆえの「不安」からの回り道だったようにも思います。回りまわってここに戻って来てよかった、と今では思っていますが・・。

先月半ばに視聴した「代替療法」の講演会では、大野智先生が、がん治療中に補完代替療法を取り入れる人に共通することは「未来への不安」と話されていました。まさしく。そのことを知った上で、どう代替療法と向き合ったらよいかお話されていました。よい勉強になりました。

       

「不安」とどう向き合っていくか、それは、私たちががんとどう向き合っていくか、ということと同じくらい大事なテーマだと思っています。いろいろな考え方があるのかなあとも思います。いつかみなさんとこのテーマについておしゃべりできるといいなあと思っています。

今年も、振り返れば猛暑や長雨といった異常気象の夏でした。自分が頻繁に通院した年も猛暑と台風の夏で、それも過酷でしたが、さらにコロナ禍でみなさんが抱える不安はいかほどだったろう、無事に夏を乗り切っておられますように、と願います。

                              (9月1日)                         

🌻8月のコラム「コロナ禍での夏」 

 

 

コロナ禍と猛暑の過酷な夏。でも、TVでオリンピックに出場するアスリートの方々の活躍や言葉を目にし、耳にしていると、一筋の希望が見えてくるような思いになります。苦しくてもあきらめずに進んできたことで、新しい道が見えてきた。コロナ禍でできなかった時期があったからこそ気づかされたこともあった。このような意味の言葉が、これまで以上に説得力のある言葉として響きます。自分自身もコロナを通して何に気づき、これから先何を目指していけばよいのか、あらためて問い直してみたいと思うこの頃です。 

 

ところで、この夏はコロナワクチンが身近になり、もうすでに受けられた方もいらっしゃると思います。先日、がん研有明のドクターが「がん患者は治療を問わず、みな基礎疾患をもっていると考えていい。」と話されていました。この基礎疾患の程度やとらえ方については、がん種やその症状とともに、一人ひとりの治療の時期や期間、今の状態などを考慮しつつ最終的には主治医の判断を仰ぐのがよい、という補足はつけられていましたが…。
 

また、乳がん患者はリンパ浮腫への影響を考慮し、術側と反対側に接種となりますが、両側にリスクがある場合は太ももという選択肢もあるようです。

得られた最新の情報から接種のベネフィットとリスクを天秤にかけてみる、このことは、がん治療を選択することと同じだなあと思いました。がん患者である私達は、治療の他にも人生のさまざまな選択をしてきていることも多いでしょう。ワクチンにおいても、主治医の先生と相談しながら正確な情報を得て、自分自身にとって一番良い選択をする、ということに尽きるように思います。 

 

コロナに関する正しい情報は、国立がん研究センターが運営している「がん情報サービス」から得られます。メイプル ピアのホームページ左上にある「がん情報サービス」のボタン(白地に緑色の文字)からも開いて見ることができます。がん患者の様々な疑問に答えてくれるQ&Aも載っていますので、気になることがあったら一度覗いてみてください。また、見る際はいつ更新された情報かというチェックもしてみてくださいね。
                                                                                                          (8月1日)
 


    

🍅7月のコラム「蚊の季節」 

梅雨の真っ只中です。晴れ間のない日が続くと鬱々としてきますが、みなさん、体調はいかがでしょうか。 

しとしと降る雨音にはヒーリング効果があったり、どしゃ降りの後に発生するマイナスイオンは血圧を降下させてくれたり疲労を癒してくれたりする効果もあるそうです。良いこともあるのですね。

 

先日は検査通院日でした。 

GW明けに行った時とは対照的に、その日はどこも空いていました。血液検査も待ち時間0。毎回のことながら緊張感が高まる瞬間なので呼吸を整えて、、などと思う間もなく順番がきて、自然に呼吸してと言われてもやっぱり息が「うっ」と止まってしまいました。情けないことですが、採血で二度倒れてから血をとられることが大の苦手。術側と反対側が使えなくなってからはなおさら、です。 

血の関連でもう一つ。 

蚊の季節到来ですね。私はすでに今年になって数回刺されましたが、腕や脚、首と満遍なく刺されると、「やられた。」という気持ちとともに「ほっ。」とする気持ちも加わります。それは、数年前の術後はじめて迎えた夏の記憶がいまだに残っているからです。 

センチネル検査、リンパ郭清と続き、リンパ浮腫のリスクがある人は夏は日焼けとともに蚊に刺されることにも注意を、とは知る人ぞ知る話。なので、とくに術側は気を付けていたつもりでしたが、蚊のほうが一枚うわてだったようで、隙間を狙われて、気が付くと幾度となく刺されてしまいました。対策をしていなかった反対側の腕は無傷だったのに。 

そこからは、蜂窩織炎になったこと一度、腕中が蕁麻疹で腫れ上がったこと四度、うち二回は救急外来に走り、二回は氷水で冷やしてしのぎました。リンパ浮腫は発症しませんでしたが、当時、蚊にはほとほと悩まされました。 

そんな蚊も、3年目の夏を迎えた頃には術側集中攻撃の手を緩めてくれたようです。反対側を数年ぶりに刺した蚊に「ありがとう。」だなんて自分でも笑ってしまいますが、まさにそんな気持ちでした。 

この二夏続いた異常な状況は、主治医をはじめ医療者の方々には「聞いたことがない。」と言われて終わっていましたが、その後知り合った乳がんの友人から「私も術側だけ執拗に狙われた。」との話を聞きました。やっぱり!自分の思い込みでなかったと今でも思っています。(でも、この友人のほかには聞いたことがないので、これからの方はあまり心配しすぎないでくださいね。もちろん、最善の注意を払いつつも。) 

話を通院に戻しますと、今回いよいよ噂の呼び出しブザー端末を初体験。と思いきや、とうとう1回も鳴らずに終わりました。4つの項目が入力されていたので、チャンスは4回あったはずなのですが。
                                                                                                   (7月1日)

🌽6月のコラム 「臨床試験」

もうすっかり梅雨入りしたかのような日々。あじさいの青紫やアナベルの白がまぶしく映ります。食中毒には十分に気を付けたい時期ですね。

 

ニュースではワクチン接種の話題でもちきりです。ワクチンに関連して「臨床試験」という言葉をこの1年あまりでたびたび耳にするようになりました。 

私がこの言葉をはじめて意識したのは、5年前です。腫瘍内科の先生から病理検査結果を告げられた後、「治療は〇〇さんが納得してから始めたいので、じっくりと考えてきてください。」と1か月の猶予を与えられました。ちょうどその頃、新聞の一面に「国立がん研究センターで臨床試験の対象者を募集」という大見出しを発見し、自分がその対象に入るのかどうか先生に検討していただいたのを思い出します。その結果、私は対象者に引っかからないとわかったのですが、それからも折に触れて気になる言葉ではありました。間もなく知り合った友人からは、治験に参加したという話を聞きました。 

それから2年後、国立がん研究センターがん対策情報センターの患者・市民パネルとなった時に再びその言葉を聞きました。全国から集まった患者・市民パネルのディスカッションのテーマに「がんの臨床試験」が取り上げられたため、事前に専門家の方の詳しい説明を聞きました。その時にはじめて、臨床研究の中に臨床試験、さらにその中に治験があるという位置づけやそれぞれの違いがはっきりとわかりました。臨床試験がなぜ必要なのかということも、何となくわかっているようで実は十分には理解できていなかったことにも気づかされました。 

イギリスでは市民や患者の臨床試験への参加割合が国の施策によって増えている一方で、日本ではなかなか患者参画が進んでいない、ということもその時に知りました。こうしたそれぞれの国の事情を知って今のコロナ禍での日本や欧米(とくにイギリス)のワクチン事情を耳にすると、いろいろと考えさせられます。 

乳がんの新しい治療薬が次々と承認されている背景には、現在の「標準治療」よりもより良い治療を患者さんに届けたい、という目的で行われている臨床試験があり、そこに参画しているたくさんの患者さん達がいるからなのだなあとつくづく思います。そんなことを考えながら、ニュースに耳を傾けているこの頃です。 

患者・市民パネルとしては今年度で4年目、任期満了を迎えますが、来年1月にまた次年度の募集が始まると思います。コラムを読んでくださっているみなさんも、もし興味がありましたら「がん体験者(またはご家族)」として一度参加されてみてはいかがでしょうか。「国民目線でのよりよい情報発信」を目的としてホームページやがん冊子改善などに協力することが主な任務です。全国から集まった患者・市民パネル同士での情報交換もできますよ! 

                                                                                                 (6月2日) 

🍃5月のコラム「患者とドクター」 

 

家の近くのハナミズキの樹がいつの間にかグリーン一色、新緑が目に沁みる頃となりました。コロナ自粛のGWをいかがお過ごしですか。 

私はがんになってから野菜作りを始めましたが、ちょうどこの頃は種から植えたかぶや春菊の間引き、トマトやナスの苗植えにちょうどよい時期なので土と向き合うことにしています。始めた当初は抗がん剤治療の真っただ中で、そのような時期に手を泥だらけにするのは無謀なことだったとあとで知って青くなりましたが・・。 

もう一つやりたいことは、本を読み終えることです。先月借りた本が一向に読み進まなかったので(お年頃のせいか目がしょぼしょぼ、疲れ目をいいわけにして)、ここで一気に最後まで読み進め、図書館の延長期間ぎりぎりに間に合わせたいと思っています。 

本を読めること=心に少し余裕があること、というのは入院生活で実感しました。 

11B棟に来てくれた友人たちが置いて行ってくれた本の山積みは、入院中はともかく退院してからもしばらくは読む気持ちになれなかったのを思い出します。だいぶたって文字を追えるようになってからは、乾ききった砂漠が水を吸収するように言葉のひとつひとつ

をすうっと飲み込んでいった気がします。 

 

昨年からのコロナ禍では、時に心が落ち着かなくなり、ざわつき、イライラし、、そんな時にも、やはり本に向かおうという気持ちになれませんでした。今、本に手が伸び始めているということは、メンタルそれほど悪くないのだなあ、と今では自分自身のバロメーターのひとつにもなっています。 

みなさんは、何か日頃ご自身のバロメーターにしていることってありますか?

さて、今回読んでいる本は「話を聞かない医師、思いが言えない患者」(磯部光章著)です。3年前に、循環器内科がご専門の磯部先生のご講演を聞いて以来気になっていた本でした。

医師と患者のコミュニケーションギャップがなぜ生まれるのか、ということから始まります。自分の体験も重ね合わせながら読んでいますが、人間の判断がいかにいい加減であるかがわかる「お絵描き実習」の話や、「フレーミング効果のために情報は聞き手にとって都合のよいようにしか伝わらないことがある」というくだりは、あらためて、なるほど、でした。筆者の願いでもある、医師と患者がよりよい関係を気づいていくためのヒントが詰まっている本だと思います。長引くコロナ禍で医療者のひっ迫はますますのことと心配です。患者としてできることって何だろう、「患者力」ってよく言われるけど、どのように医療者と向き合えばよいのだろう、などと考えながら読み進めています。

                                                                                              (5月1日) 


🌸4月のコラム 「私の心の処方箋」

花冷えのこの頃、うっすら寒い日が続いていますね。

気温の変化で体調を崩さないよう気を付けて過ごしていきたいところですね。
     
今回は、これから毎月1回発信していきます「メイプル ピアだより」第一号です。

その時、その時で感じたことをコラムで綴っていきたいと思っています。
 

また、ホームページの更新情報もお伝えし、新しい取り組みがあったらいち早くお知らせできたらと思っています。よろしくお願いします。

メイプル ピアを作って間もないため、立ち上げメンバーで話し合いを重ねてはきているものの、ホームページひとつとってもまだまだ初心者、ままならないことだらけです。一人でも多くの乳がんの方々に会についての思いを届けたい、でも、院内の会であるし、できれば関係する方、必要としている方のみに見ていただきたい、このようなジレンマの中でもがいている昨今です。
 
そんな中、今日はヨガで久しぶりに気持ちをリフレッシュさせることができました。乳がんが見つかって5年、その間、みなさんと同様さまざまな初体験とそれにまつわるからだや環境の変化の中で、メンタルがジェットコースターのように上がったり下がったり、、。不眠にも悩まされてきました。そんな最中に出会ったのが「がんヨガ」でした。心がざわついたり、もやもやしたり、自分が許せなかったり、、とにかく気持ちがしんどい時に、私にとってはとてもありがたい「心の処方箋」になりました。先生ご自身も乳がん体験者です。当時は「乳がんになる人は、とくに真面目でがんばり屋の人が多いのよね。もう、そんなにがんばらなくていいって自分に言ってあげて。」の言葉に涙があふれたことを覚えています。
 
1か月ぶりのヨガでしたが、身体のいろいろな場所を伸ばしたり、呼吸法に取り組んだり、先生の心に響く言葉を聞いたりしている間に、いつものように固まっていた身体や心が開放されて、凝り固まっていた思考も少々ほぐされてきた気が・・。術後間もない時期に参加されていた方もいました。ヨガは呼吸法に重点を置いているため、主治医の先生の許可を得て手術後あまり間をあけずに始める方もいるそうです。先生曰く「手術を経験した人は肩甲骨の下の筋肉がとくに固まってしまうため、ヨガでなくとも日々動かすようにしてほしい。その時に心がけてほしいのは、やりすぎず、やらなさすぎず!」ヨガに限らず心がけます、はい。 

リンパ浮腫予防には皮膚のすぐ下のリンパを優しくマッサージすることに加えて、身体の深部にある大きなリンパを刺激してあげることも大事。腹式呼吸はその助けになる。最近言われていることで、患部の周辺のみにとらわれず、身体全体に意識を向けることも大切。全身の筋肉を鍛えることも重要、だそうです。ご自身もリンパ浮腫になられた先生の、説得力のある言葉でした。(この病院の先輩と後で知りました。) 

ヨガのほかにも、認知行動療法をかじったり、精神腫瘍科にお世話になったりしたことも自身の助けになったことです。 
   
みなさんも、心に効いた処方箋、それぞれがお持ちだと思います。まだ、これから見つけたいという方もいらっしゃるかもしれません。 


交流会ではいろいろな情報交換ができるのを楽しみにしています。                                                                                                                               (4月14日)


 


 

bottom of page